1945年、第2次世界大戦が終了した当時、世界のほとんどの国には死刑制度が存在していました。
ところが、2022年12月末時点では、死刑制度の廃止国(10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国を含む)は144カ国、死刑制度の存置国は55カ国で、世界の3分の2の国が死刑制度を廃止ないし停止しています。
死刑存置国の中でも実際に死刑を執行している国はさらに少なく、2022年は20カ国にすぎません。
また、死刑制度の廃止はEUの加盟条件となっており、欧州のほとんどの国で死刑制度が廃止されています。
いわゆる先進国の中で死刑制度の存置国とされるのは日本とアメリカだけですが、アメリカにおいては23州で死刑制度が廃止されており、また、14州は過去10年間死刑を執行していません。
全50州のうち、死刑執行が行われているのは13州にとどまります。
国際連合においては、1989年12月15日にいわゆる死刑廃止条約が採択され、日本に対して再三にわたり死刑制度の廃止に向けた措置を講ずることが求められています。
2007年12月18日には、すべての死刑存置国に対して死刑の執行停止を求める決議が総会で採択されました。
国際人権(自由権)規約委員会は、何度も、日本に対して「政府は世論にかかわらず死刑制度の廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対して死刑制度の廃止が望ましいものであることを知らせるべきである。」と勧告しています。
このように死刑制度の廃止は国際的な潮流となっています。 そのような潮流の中で、日本が死刑制度を存置していることで、国際的な司法共助にも問題が生じています。
日本国内で起こった殺人事件の犯人が海外に逃亡した場合、犯人を日本政府に引き渡すと死刑になってしまうかもしれないという懸念から、日本は、韓国と米国以外の国とは犯罪人引渡条約を締結できていません。
グローバル化が進む社会で、多くの外国人が来日していますし、日本に居住している人が海外に転居して生活することも容易になっています。
海外に逃亡した犯人の引き渡しを求めることができないままでは、日本で起こった犯罪なのに、日本の警察は逮捕もできず、裁判をすることができなくなってしまうのです。
そういうケースは、現実にすでに何件も発生しています。
また、日豪円滑化協定の締結にあたっては、日本が死刑存置国であることから、裁判権が大きな障害となりました。
最終的には、協定の付属文書では、日本で死刑を科される可能性がある犯罪を起こした場合には、オーストラリアが日本への身柄引き渡しを拒否できる規定が盛り込まれました。
死刑廃止国であるオーストラリアの軍人が日本国内で殺人事件を起こした場合、日本では裁判を行うことができないのです。 「他国は他国、日本には日本の考えがある、他国に合わせる必要はない」という主張もあります。
かつてはそれが通用していたのかもしれません。
しかし、グローバル化する社会において、死刑制度が様々な場面で支障となってきており、そのような主張が通用しない現実が生じてきています。
グローバルスタンダードではなくなった死刑制度を見直す時期になっています。