What’s retrial?再審とは?
「えん罪」は、国家による最大の人権侵害です。
無実の人が処罰されることは、絶対にあってはなりません。
しかし、裁判も人が運用する制度です。
ときに誤りが生じる可能性を、完全になくすことはできません。
誤って処罰されてしまった人を救済する唯一の制度、それが「再審」です。
Problem再審の問題点とは?
Problem #1「裁判官ガチャ」とも言われる格差の存在
刑事裁判のやり方などは、「刑事訴訟法」という法律に定められています。
第2次世界大戦後、刑事訴訟法は大きく改正されましたが、再審に関する部分は「時間切れ」となり、戦前の条文がほぼそのまま残ってしまいました。
そのため、500条以上ある条文のうち、再審に関するものはわずか19条のみ。
再審の結果によっては、無実の人が救われず、死刑が執行されてしまうこともあります。
そのような極めて重大な再審を、わずか19条の条文でどのように行うのか?
それは、再審を担当する裁判官の裁量です。
裁量というのは、わかりやすく言うと「裁判官のさじ加減」です。
再審を申し立てる側は、裁判官を選ぶことはできません。
ですから、良い裁判官に当たれば再審手続はスムーズに進みますが、悪い裁判官に当たれば一向に進まない。
つまり、「無実の人が救われるかどうかは裁判官次第」という「裁判官ガチャ」がまかり通っているのが日本です。
その結果、ある人は順調に再審手続が進んで無罪が確定し、またある人は一向に再審手続が進まず、刑務所の中で病死したり死刑が執行されるという最悪な事態にもなっています。
これが、「再審格差」という問題です。
これはもちろん個々の裁判官の問題はありますが、根本的な問題は、どの裁判官に当たろうと適正・公平な裁判を受けられるルールが存在していないことです。
基本的なルールが存在しないからこそ、裁判官の裁量によって運用せざるをえないのです。
Problem #2無罪の証拠が隠されたまま
基本的なルールが無いことで、実際に重大な問題が起きています。
たとえば袴田事件などでは、捜査機関が持っていた証拠の中に、無罪の証拠が隠されていました。
ところが再審では、捜査機関に証拠を開示させる条文がありません。
裁判官が捜査機関に対して証拠開示が命じるかどうかは、「裁量」次第です。
袴田事件などでは、気の遠くなるような長い年月がかかり、失われたものは大きかったものの、結果的に無罪の証拠が多数開示されたことは不幸中の幸いと言って良いかもしれません。
ところがこれは、「たまたま」裁判官が証拠開示を命じたからに過ぎず、このまま隠され続けていた可能性も十分あったのです。
裁判官の裁量という、極めてあいまいで抽象的なものに、人の命が委ねられている。
これが日本の再審制度です。
Problem #3そもそも時間が掛かりすぎる
再審制度には、
- 再審を開始するかどうかを決める「再審請求手続」
- 無罪を言い渡すべきかどうかを決める「再審公判手続」
この2段階があります。
ところが、まずこの第1段階の審理に相当な期間がかかります。
裁判所が「再審を開始する」という決定をしても、検察官がその決定に不満があれば抗告ができます。
抗告というのは、「『再審を開始する』という決定は間違っている」という異議申し立てです。
抗告が行われると第2段階への移行は一旦保留となり、その抗告が正しいかどうか審理しますので、それでまた時間がかかります。
そうやって抗告が繰り返されれば、いつまで経っても第2段階の再審公判が始まりません。
その結果、無実の罪を晴らせないまま、何十年も闘い続けている人たちがいるのです。
Our Opinion私たちの考え
「開かずの扉」と言われる再審の現状を変えるには、法律を変えるしかありません。
京都弁護士会は、「再審法改正実現本部」を設置し、再審法の改正を目指しています。
- 刑事再審手続のルールの整備
- 刑事再審での証拠開示手続の制定
- 再審開始決定に対する検察官抗告の禁止
市民の皆さんとともに、私たちは、これら3つの改正を目指していきます。