死刑は残虐な刑罰

死刑制度は、生命を奪うことにより、人を永遠に社会から排除します。

まず、そのように人の存在を全否定し、生命を奪う点において、死刑制度はそれ自体極めて残虐な刑罰と言えます。

そして、死刑の執行は、どのような執行方法をとったとしても残虐です。

殺人事件において、その殺害方法に残虐でない方法がないのと同じく、生命を奪う死刑制度にも残虐でない執行方法はありません。

絞首刑であれ、薬物やガス、電気殺など他の執行方法であれ、それぞれに死に至る過程があり、その過程において程度の差こそあれ、肉体的、精神的に大きな苦痛を与えることは間違いがなく、いずれの執行方法であっても残虐というべきです。

とりわけ、日本で定められている絞首刑はことさらに残虐な刑罰です。

最新の法医学の研究によれば、絞首刑による場合、直ちに生命が失われるわけではないことがわかっています。

絞首刑による典型的な死因である窒息死の場合、少なくとも数秒から十数秒間は意識があり、その後、死亡に至るまでに一定の時間を要することがわかっています。

つまり、絞首刑は、死亡に至るまで、長時間苦痛を与え続ける執行方法なのです。

また、絞首刑の際に、時に、頭部離断という凄惨な結果に至る場合があることも明らかとなっています。

このように甚大な苦痛を与えたり、凄惨な結果を招く絞首刑は、特に人道上残虐な刑罰というほかはありません。

さらに、死刑制度は、判決確定から執行までの間、死刑確定者を「いつか必ず合法的に、確実に殺される」という恐怖にさらし続けるという点でも残虐な刑罰というべきです。

戦後の混乱期から、経済的にも、文化的にも先進国と位置付けられるにいたり、なおかつ、凶悪犯罪の発生率が低く、その件数も大幅な減少傾向にある今日の日本の社会においては、今や死刑制度は残虐な刑罰を禁じた憲法36条に違反すると解さざるをえません。